ペトロは、「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。
マタイ26章75節(参考聖書箇所同書26章69?75節)
ペトロは三度主を知らないと申しました。彼のキリスト否認の告白は、一度目より二度目、二度目より三度目と次第に否認の度合を強めています。三度目には主を呪う言葉さえ口にしながら「そんな人は知らない」と誓ったと聖書にあります。主を知っていますと告白するより、主を知らないと告白するのに、これほどのエネルギーを必要とするとはだれが想像するでしょうか。
このペトロの不信仰というべき否認の告白もまた、神の計画の中にあることを聖書は告げます。主はペトロに言われました。「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。呪いの言葉さえも口にして主を否認したのに、それすらもなお主はご存知であって、気がついて見れば、不信仰の告白もまた主の計画の中にあるとはと、がく然とした思いをペトロは持ったにちがいありません。
思えば、彼は不信仰の表明を主の前で行なったのです。しかもそのことを主はあらかじめご存知でありました。彼は激しく泣かざるを得なかったのであります。主は、信仰の世界だけでなく不信仰の世界にまで、手を差し伸べておいでになることをこの出来事は、わたしたちに知らせてくれます。