新型コロナ・ウイルスのニュースが絶え間なく続いている最中、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が心臓手術を受けた後、重篤な状態に陥ったと米CNNが報じ、世界を震撼(しんかん)させた。米中央情報局(CIA)や国家安全保障会議(NSC)が現在、状況を注視していると伝えられている。
2002年から、北朝鮮によるクリスチャンへの迫害は世界一と言われ、20年の世界の迫害国リスト(ワールド・ウォッチ・リスト2020)でも第1位となっている。
金正恩は国の神と考えられており、報道の自由はなく、家族についてのニュースもコントロール下にある。キリスト教迫害監視団体「オープン・ドアーズ」の広報は、「北朝鮮は否定のしようがない場合のみ、ネガティブな情報を発表する。そして現在のところ、沈黙を守り続けている」と伝えている。
北朝鮮は従来、憶測に対してはプロパガンダで払拭を図ってきたが、今回は今のところ何の対応もないことから、何らかの状況が発生していることが示唆される。
金正恩は12日、平安北道(ピョンアンブクト)の妙香山(ミョヒャンサン)地区にある香山診療所(※)で心臓手術を受け、首都・平壌(ピョンヤン)近郊の町で静養していると見られる。これらの病院や町すべてを金ファミリーが独占的に使用しているとされる。また、脱北者によって運営されている北朝鮮専門ニュースサイト・デイリーNKは、多くの医師がつきっきりで金正恩の治療にあたっていると伝えている。
※「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」会長の西岡力(にしおか・つとむ)氏によると、「金正恩はいま、東海岸の元山にいます。手術を受けた可能性はありますが、その場所は元山です。ディリーNKの運営主体は脱北者ではありません。韓国人です。ただし、脱北者記者の何人かはいます。香山診療所は小さな田舎の診療所で、金正恩の手術を行える場所ではありません」とのことです。
金正恩に代わるのは誰か
北朝鮮指導部には、金ファミリーへの忠誠を示すことが求められ、金ファミリーへの依存体制を形作っている。金正恩が死亡しても、その子どもたちは後を継ぐ年齢にまだ達していない。
北朝鮮は儒教に基づく男性社会だが、妹である金与正(キム・ヨジョン)が後継者と見られている。しかし、ナンバー2の崔龍海(チェ・リョンへ)政治局常務委員や金与正などによる集団指導体制への移行の可能性もある。
崔龍海は元人民武力部長であった父を持ち、若い頃から政界で活躍していた。1990年末に、正式な許可なく屑鉄(くずてつ)を海外に販売したとして失脚したが、金正日(キム・ジョンイル)の妹である金敬姫(キム・ギョンヒ)に助けられて復権を果たしている。
2011年の金正日総書記死亡の後、金ファミリーを支える重要な役割を果たしてきた。14年に嫌疑をかけられて降格したが、再び国の重要なポストに返り咲いている。
金正恩の妹である金与正は、崔龍海氏の息子と結婚しているとの情報もある。朝鮮労働党中央委員会の政治局員候補、また同宣伝扇動部副部長として活動し、兄である金正恩と共にスイス留学し、非常に深い絆(きずな)で結ばれていると言われている。2018年の平昌(ピョンチャン)オリンピックで世界の表舞台に登場し、金ファミリーで初めて韓国を訪問した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談に参加し、トランプ米大統領との会談では外交官として対応した。
クリスチャンへの影響は?
2011年の金正日総書記死亡の後、権力闘争が生じた。そして、叔父である張成沢(チャン・ソンテク)も死亡した。
オープン・ドアーズの協力者は、「金正恩の突然の死は、少なくとも上層部に闘争とカオスをもたらすだろう」と断言する。
「そして、より高い統制社会がクリスチャンたちにも実感されるだろう。リーダーが弱ければ弱いほど、人々を統制し、抑えつけるために強権化するだろう」と付け加えた。
30歳にも満たずに権力の座についた金正恩は、将官や政治家の信頼を勝ち取ることができなかった。祖父のイメージを模倣し、努力したものの、人民への統制は強められた。
「若く魅力的な女性の新リーダーも同じことをしなければならない。クリスチャンやほかの反体制と見なされる人々は弱い立場に置かれることになる」と専門家は分析する。
オープン・ドアーズは短期間での決定的な変化を望まない。残念ながらクリスチャンは抑圧され、北朝鮮のクリスチャンと中国との間で展開される救援プロジェクトに頼らざるを得ないだろう。
「今、私たちのラジオ番組は、隠れて信仰を守っている兄弟姉妹の大きな励ましになっている」と協力者は話す。
北朝鮮が崩壊したら
中国は20万人に及ぶ軍隊を北朝鮮国境付近に配置させており、状況によっては介入して北朝鮮を統制下に置こうとするだろう。韓国との統一の可能性はほぼない。しかし、もし体制が転覆し、中国も併合をあきらめざるを得ない状況に陥れば、話は変わってくる。
「中国がそれを許可できるのは、米軍が朝鮮半島から撤退するか、少なくとも北朝鮮に軍隊を侵攻しない場合のみです。そうなれば、中国は統一を認める可能性が出てくる」と彼は言う。
いつクリスチャンへの迫害が終わるか
金ファミリーが権力の座にい続ける限り、迫害は続くだろう。現政権は「キリスト教は絶対的権力を脅かす」と見なし、「宗教的迷信による反革命の痕跡」と名づけた宣伝映画を上映し、クリスチャンが及ぼす脅威を警告してきた。
本記事は、ブラジルのキリスト教メディア「ゴスペル・プライム」に掲載された記事より翻訳し、編集しました。翻訳にあたって、多少の省略をしています。
出典URL:https://www.gospelprime.com.br/kim-jong-un-morreu-acontece-cristaos/?