日本基督教団四谷新生教会(東京都新宿区)で開催された第58回「なくせ!建国記念の日 許すな!靖国国営化2・11東京集会」(同集会実行委員会主催、日本キリスト教協議会=NCC=靖国神社問題委員会後援)では、山口陽一氏(東京基督教大学学長)が「日本的キリスト教と靖国」と題して講演。
靖国神社の特異性について、天皇のために戦死した者を英霊として祭ることで、「遺族の悲しみを国家のための尊い犠牲に転化し、犬死への憤りをなだめ、国のために喜んで死ぬ人をつくる」ための施設という特異性を強調。その歴史を概観しながら、神社非宗教論により国家神道復活に道を開こうとする動きが常に存在してきたことを明らかにした。
今年1月、陸上自衛隊の小林弘樹幕僚副長が幹部22人と靖国神社を参拝した問題についても、この間の秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪、軍事費倍増、武器輸出をめぐる議論など、アメリカの要請による参戦の準備が進む中で行われたことに「靖国神社国家護持反対運動の成果が危機にさらされている」と強い危惧を示した。
また、1990年の大嘗祭が戦後日本の新たな民族主義への転換点だったとし、かつて教会が戦争遂行のために同調し、国家神道の神社をキリスト教の神と並べて「皇運」を扶翼した歴史を引き合いに、2015年に設立された「日本を愛するキリスト者の会」に象徴されるような言説について、1930年代に続々と現れた「日本的キリスト教」と類似するものと指摘。
戦後を戦前に回帰させ、「人のための国」を「国のための人」に引き戻そうとする動きをけん制した上で、「自己完結的な天皇の国の情にからめとられないよう注意しなければならない。良心をめざめさせておくこと、神のことばに聴いて神のみを礼拝し、隣人を愛する生き方が求められている」と、「日本的キリスト教」の誘惑に陥らないよう警鐘を鳴らした。