牧師の道からゲーム制作へ方向転換 Yonaさん作のインディーゲーム「In His Time」 講談社ゲームクリエイターズラボが後押し

「信仰者としてゲーム作りがしたい」

そんな思いを語るゲームクリエイターYonaさん(26)の手がけた新作「In His Time(イン・ヒズ・タイム)」が10月3日、Steam(スチーム)版インディーゲーム(独立系ゲーム)としてリリースされた。Steamは主にパソコン用のゲームを購入してダウンロードできるプラットフォーム。「ダークソウル」シリーズや、カプコンの対戦格闘ゲーム、レベルファイブのRPG「二ノ国II」など、日本のゲームも含め数多くのタイトルが配信されている。

「In His Time」は、少年・オリーが主人公の2D謎解きアドベンチャーゲーム。オリーは病弱の母・ライラと二人ぐらし。父親はすでに亡くなっている。影絵風の印象的なデザインと世界観の中、架空の物語を一緒に読み解いていく。喪失体験とヤングケアラーとしての重荷を負いながら、他者の心と触れ合いつつ最終的には希望を見出していくオリジナルストーリー。

https://store.steampowered.com/app/2361610/In_His_Time/

学生時代からゲームのプログラミングをしていたというYonaさんが2020年、ゲーム会社に勤務しながら講談社の新規プロジェクトであるゲームクリエイターズラボの募集する企画に応募したのがきっかけとなった。選ばれたゲームクリエイターに講談社から担当編集者がつく上、年間最大1000万円の支援金が支給されるコンテスト。1000人以上の応募作からわずか5人ほどしか選ばれない狭き門で、初回は落選。翌年の再挑戦で見事チャンスをつかみ取った。

企画からデザイン、プログラミングまですべてこなせるYonaさんの才覚を見出し、ともに開発作業に伴走してきた同ラボの織田和馬さん(29)は、「テストプレイの段階で何度も修正を繰り返し、伝えたいメッセージが押しつけがましくならないようすり合わせて、一般のプレイヤーにも受け入れられる形になった」と振り返る。

「In His Time」のワンシーン © yona / Kodansha Ltd.

構想の段階から、キリスト教や聖書のメッセージを、大好きなゲームを通して広めたいという願いが根底にあった。「In His Time」には、要所で聖書のテキストも登場する。

牧師家庭に生まれ、「3世」として幼いころから教会で育てられた。幼いころからテレビやゲームに親しみ、特に「ポケモン」など任天堂のゲームを愛好した。大学では医療工学を学んだが、就活での出会いに恵まれず、牧師になろうと神学校への進学を志した。一時は教会を挙げて応援してもらうまでになったものの、「召し」が分からなくなり頓挫。急きょ方向転換して、4年生の11月に独立系ゲーム会社へ内定が決まった。思い描いていた道筋からはかなり逸れたが、「宣教に資するコンテンツを」との熱意は今も変わらない。

「ゴスペルにしてもインディーゲームにしても、海外のクリスチャンアーティストが手がける作品はクール。聖書には今日の私たちにとって常に新しいメッセージがあるのだから、私たちも新しい手法も駆使しつつ、神様のことを堂々と語っていきたい」とYonaさん。

すでに次回作の構想も練っていると話すYonaさん

主人公の少年・オリーは、あつい信仰を持っているわけではない。作者の「語りたい」が勝ってしまうとプレイヤーは引いてしまう。担当編集者による第三者の助言によって、説教じみた台詞にならず、自然な会話の流れから本質的なメッセージを想像できるような工夫が施された。

世界的な人気を誇る「マインクラフト」同様、個人や小規模の開発チーム、同人サークルなどによって作られたインディーゲームは、実際に遊んでもらったプレイヤーによる口コミが強い世界。来年春には、家庭用ゲーム機Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)への移植も決まっている。実際に遊んでみて感じたことを、信仰の有無を問わず広く共有できたら、まだ誰も足を踏み入れたことのない新たな地平が広がるに違いない。期待ばかりが膨らむ。(本紙・松谷信司)

「In His Time」
リリース日:2023年10月3日
プラットフォーム:Steam / Nintendo Switch(2024年春発売予定)
https://store.steampowered.com/app/2361610/In_His_Time/
プレイ人数:1人
ジャンル:アドベンチャー / パズル
価格:990円
対応言語:日本語 / 英語 / 中国語(簡体字)
© yona / Kodansha Ltd.

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