Q.神学校に入らずに牧師になる道はありますか?(30代・男性)
答えは簡単。あります。神学校を卒業しているかどうかは問題ではありません。ただし、その人が神さまから牧師として召命されたことへの確信と、他の人への証しは必要でしょう。そうでないと自分勝手に牧師になったと言われるからです。
一般に牧師になるには、神さまからの召命を所属する教会の信徒に証しをし、承認していただき、祈りによって支えられることが大切です。その上で神学校なり聖書学校の学びを経て、牧師の働きを始めます。
聖書を見ていくと、旧約でも新約でも、神の召命があって預言者や使徒になっています。ですから、召命はいかなる場合でも求められます。新約の使徒たちも、主イエスのもとで訓練を受けました。これが今日の神学校の手本です。
神学校で教えている私の考えでは、牧師を目指す方にとって、神学校の卒業は条件ではないものの、学ぶ道を選択することをお勧めします。なぜなら、神学校で得られる多くの教師や学生との出会いと交流は有益です。独学は知識と理解に偏りがあるなど、不十分な面が避けられません。他の人を教え導くときに、その弱点が出てしまうリスクがあります。
既成の教団や教会では、神学校を卒業していることを、招聘の条件としているところが多くあります。ですから神学校を卒業していない場合は、単独で伝道することになるでしょう。あるいは、条件をつけないところを探すことになります。日本は良くも悪くも学歴・経歴社会です。神学校を卒業していないことは、ハンディになります。どこの神学校を卒業しているかで、態度や言葉が変わることもしばしばあります。
これを打開するのは、実績を示すことです。良き牧会と熱心な伝道によって、実績を示せばやがて信頼されるでしょうが、そうでないと批判を受けることも現実です。教会の大きさで、牧師の信仰と人格が図られやすいのは、世の中と同じです。神さまのみ心とは違いますが……。
かつもと・まさみ 1950年熊本県生まれ。聖契神学校卒業後、立正大学仏教学部(日蓮宗)を卒業。あわせて僧階課程を修了。その後、仏教大学で仏教学(浄土宗)を専攻。神道や民俗宗教の学びの必要を覚えて、神道宗教学会に加入。郷里熊本で牧会の後、1990年から千葉県流山市で開拓伝道を開始した。後に日本聖契キリスト教団に加入し、聖契神学校講師(比較宗教·日本教会史)を担当。著書に『日本人の生活習慣とキリスト教』『日本の宗教行事にどう対応するか』(いずれもいのちのことば社)など。