Q.知らないうちに新宗教にはまり、キリスト教批判を繰り返す子どもにどう対応すればよいでしょうか?(50代・男性)
それは親として、とてもつらいことですね。ご自分を責める気持ちや何としても子どもに教会に戻ってきてほしいという願いがあるでしょうが、まずは話ができる関係を作ることが大切です。それには、お子さんを怒ったり責めたりしないことです。責めても何の解決にもなりません。
次に、お子さんが言いたいことをきちんと聞くことです。キリスト教批判の言葉を聞くとつい反論したくなったり、弁護したくなったりしますが、そこはぐっと抑えましょう。もしかしたらお子さんの言っていることにも一理あるかもしれません。教会も人間の集まりですから、決して完璧な集団ではありませんし、間違いや足りない部分もあります。その点は素直に認めましょう。だからといって、キリスト教や聖書の教えが間違っているということにはなりません。
さらに、こちらとしてはその新宗教の間違っている点を指摘したくなるでしょうが、批判や説得は逆効果です。それは多くの場合、自分たちが間違っていると批判され、反対されるほど、自分たちの信仰は本物なのだと教え込まれているからです。ですから、こちらがおかしな点を指摘すればするほど、自分の信仰は本物なのだと確信し、それを受け入れない批判的なキリスト教は間違っている、ということになってしまうのです。
ではどうすればいいのでしょうか? お子さんの信仰についてよく聞いてみることです。その際、「わたしは頭から反対しようとしているのではない。もしあなたの信じている宗教が本物だと納得したら、わたしも改宗するよ」という態度で臨むことです。
本当のところ、その宗教が何を教えているのか、なぜお子さんがそれを信じているのか、そこに注意深く耳を傾けることです。そして、ご自分が納得できないところを説明してもらってください。人の心が変わっていくとしたら、それは批判や説得ではなく対話の中で、です。祈りつつ対話を持ち続けていくことが、一番の対応だと思います。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
むらかみ・じゅんこ 慶応義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。アメリカ・ホイートン大学大学院臨床心理学科修士課程、聖学院大学アメリカ・ヨーロッパ文化学科博士課程修了(学術博士)。中学校、高校のスクールカウンセラーを経て、現在、聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科教授。公認心理師・臨床心理士。カウンセリングオフィスお茶の水にて心理相談も行う。