Q.現代人は旧約聖書 出エジプト記の「十戒」をどこまで守らなければならないのでしょうか?(30代・男性)
十戒はモーセを通してイスラエルの民に与えられた、神の最も大切な十の教えです。
「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」という第1戒に始まり、「あなたの父母を敬え」「殺してはならない」「盗んではならない」など、生きるうえでの最重要な教えからなります。
イスラエルに十戒を与えるにあたり、神は、「わたしの教えにしたがって歩むならば、あなたがたはわたしの与える命と幸いを得る」と約束されました。神とイスラエルの間に交わされたこの約束は、古い約束、すなわち旧約と言われます。
しかし、現代人は今、神との新しい約束の時代を生きています。新しい約束とは、神が全人類との間に結ばれた、「神が使わされた神の独り子を信じるならば、あなたがたは救われる」という約束です。人間は神の教え(十戒)を守ることができないということが、イスラエルの民の歴史によって明らかになったので、神は独り子を地上に使わし、人類と新しい約束を交わされました。
現代人は、私たちの負うべき罪を負ってくださったイエス・キリストの十字架の死によって、律法(十戒)の重荷から解放されました。律法を守ることによってではなく、キリストを主と信じることによって、私たちは神の子とされ、神の恵みのもとに生きることができる、と聖書は教えます。
では、新しい約束の時代に生きる現代人は十戒を無視して生きて良いのでしょうか。そうではありません。十戒は、昔も今も、イスラエルの民にとっても、現代人にとっても、どの一つもゆるがせにはできない、命をかけて守るべき重要な神の教えであり続けると思われるのです。
十戒は、神の愛の現れであるキリストの生と死によって、人間の守るべき義務と重荷であることを止め、救われた者が喜んで守ろうとする新しい神の教えとなったのです。
しらい・さちこ 青山学院大学文学部を卒業後、フルブライト交換留学生として渡米。アンドヴァー・ニュートン神学校、エール大学神学部卒業。東京いのちの電話主事、国立療養所多磨全生園カウンセラー、東京医科大学付属病院でHIVカウンセリングに従事した後、ルーテル学院大学大学院教授を経て同大名誉教授。臨床心理士、米国UCC教会牧師。