毎年9月になると、韓国ではプロテスタントの各教団がそれぞれ総会を開催している。今年(2022年)は、新型コロナのために実施できずにいた対面での会議が3年ぶりに再開され、キリスト教の内外から大きな関心を集めた。
毎年の総会では、多くの案件が議題に上り、韓国教会が直面する諸問題が取り上げられてきたが、今年の総会で各教団が共通して取り上げた案件としては、気候変動および環境問題、出生率の低下と少子高齢化、次世代への伝道、デジタル環境の変化、教勢の低下と神学校志願者の減少、農漁村地域における牧会者不足などがあった。今年は、議論だけでなく、実践が伴ったケースがあり、肯定的な評価を得てもいる。例えば、総会で気候危機について取り上げた韓国基督教長老会の場合、「紙のないデジタル総会、使い捨て用品を使わない総会」を標榜・実践して注目を集めた。
ところで、今年の各総会における各種の討議内容や報告のうち最も世間の注目を引いたのは、各教団が発表した教勢統計であった。教会員の減少傾向が明らかな形で示されていたからである。韓国プロテスタントの二大教団ともいえるイエス教長老会(合同)とイエス教長老会(統合)は、2020年度比で各々約9万人と約3万人が減少し、2021年の教会員数は229万2745人、および235万8914人となっている。イエス教長老会(合同)の場合、この5年間に675カ所の教会が閉鎖され、計47万人が減少したとの調査結果が出された。その他の教団も教会員数を減らしている。
このように韓国教会の教勢低下傾向は、否定しえない事実となっている。その原因については多様な分析があるが、長期にわたる新型コロナの影響や韓国教会に対する社会的信頼度の低下などがその主要原因として挙げられている。
今年5月に韓国の牧会データー研究所が実施したアンケート調査では、「新型コロナによるソーシャルディスタンスが解除されても対面での礼拝には出席しない」と答えた教会員が70%を超えている。数年前の統計庁による調査では、韓国のプロテスタント教徒は総人口の20%、プロテスタントとカトリックを合わせると30%となり、韓国教会は安泰であるとの雰囲気があった。しかし新型コロナ以降、自らをキリスト教徒と認識するかどうかは別として、教会や対面での礼拝を離れる教会員数は増え続ける可能性が高い。
また、キリスト教主義の諸大学の調査では、青年層の教会離れが急速に進んでいるとの結果が出ている。キリスト教徒である大学生の割合は5%あるいは3%未満であると推定されるのが実情である。このことと教会の社会的信頼度の低下とは、直接関連していると考えられる。一部の教団は、今回の総会においても女性按手を否定し、牧師の定年年齢(70歳)を3年引き上げることを主張し、同性愛反対を決議するなど、青年層の意識とはかけ離れた決定を行っている。
もちろん、教会員を増やすことが教会の目標ではなく、また目指すべき点となってはいけないであろう。しかし、このように顕著に現れ出している教会員の減少傾向が現在の韓国教会にとって警鐘となり、韓国教会自らがその抱える問題を点検し、自らの社会的役割を再考する契機となればと願うものである。
李 恵源
い・へうぉん 延世大学研究教授。延世大学神学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院および復旦大学大学院博士課程修了。博士(神学、歴史学)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。大阪在住。