新型コロナによって教会に普及したことの一つは、礼拝のオンライン化であろう。礼拝がYouTubeでのライブ配信となり、教会内のさまざまな会合もZoomやSNSを通して行われるようになった。インターネット時代に入って、特にデジタル環境に精通した世代を教会に引きつけるために教会は変わらねばならないと早くから言われてきたが、時代の流れに教会は一歩遅れを取っているとの感は否めなかった。しかし、新型コロナに押される形ではあったが、教会内にもデジタル化の波が押し寄せている。
韓国の場合、オンライン宣教への関心が若い牧会者を中心に数年前より高まってきている。特に2010年代の半ばごろからSNSにおいて多くのフォロワーを有するインフルエンサーの社会的影響力が大きくなり、彼ら・彼女らが新しい文化的なトレンドをリードし始めると、キリスト教内にも「クリスチャン・インフルエンサー」を育て、若い世代と意思疎通を図って宣教しようとの動きが本格化した。
2020年に実施された韓国政府によるインターネット利用実態調査によると、満6歳以上の93.1%がモバイル・デバイスを保有しているという。インターネットを利用する主な理由はコミュニケーションや交友を深めることであり、インターネット利用者のうち65.9%はSNSを利用している。このような統計の数値だけを見ても、今や韓国では、初期の情報検索が主であった時代は過ぎ去り、スマート・デバイスを通してコミュニケーションを行う「SNS時代」がやってきたといえる。
2019年にSNSチャンネル「教会の友」をインスタグラムに開設した、キリスト教エンターテイメント・グループのウン・ヒスン代表は、『韓国基督公報』とのインタビュー(2019年5月24日)で、「10代・20代はスマートフォンが世界のすべて」だと指摘し、「新しい地の果てともいえるオンラインにおいて健全なキリスト教文化を通して伝道と宣教を立て直す方法」について熟慮した結果、SNSチャンネルの開設に至ったと述べている。「教会の友」は、映像や音楽などさまざまなキリスト教の文化コンテンツを生み出してきたが、開設後3年を経た現在、約8万人のフォロワーを有している。
YouTubeチャンネルを開設する牧会者も増え続けている。その代表的な人物に「ホニの日常」を運営するイェアン教会(大韓イエス教長老会・合同、京畿道)のチェ・ジンホン伝道師がいる。彼は、YouTube登録者数12万人、インスタグラムのフォロワー数57万人など合計100万人のフォロワーを擁するクリスチャン・インフルエンサーである。チェ伝道師のビデオブログは礼拝の映像が中心ではなく、本人の日常や恋愛相談、グルメ、ファッションなど一見キリスト教とは関係のないコンテンツが多数を占めている。しかし、すべての映像の背景にキリスト教的なものが流れている。韓国では、YouTubeチャンネルを見て教会を訪ねる若者が増え、青年部の会員が2倍以上に増えた教会もある。
YouTubeチャンネルの開設は若い牧会者の専売特許ではない。最近では年配の牧師らがチャンネルを開設し、信仰・健康相談やトークショーなど多様なコンテンツを掲載し、50代・60代の間で人気を呼んでいる。
新しい「地の果て」であるオンラインにおいて宣教をいかに行うかについて考える上で、韓国教会の経験は日本の教会にとっても貴重な参考資料となるのではなかろうか。
李 恵源
い・へうぉん 延世大学研究教授。延世大学神学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院および復旦大学大学院博士課程修了。博士(神学、歴史学)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。大阪在住。