LGBTと韓国のプロテスタント 李 相勲 【東アジアのリアル】

キリスト新聞社ホームページ

私が勤務する関西学院大学では、毎年5月17日近くの週を「レインボーウイーク」とし、さまざまなイベントを通して多様な性のあり方について考え、祝っている。レインボー(虹)は、ご存じの通り、LGBT解放運動のシンボルである。今年のレインボーウイークでも諸イベントが実施された。5月17日は、国際的には「IDAHOT(国際反ホモフォビア・反トランスフォビア)の日」とされている。その起源には、1990年5月17日に世界保健機関(WHO)の精神疾患リストから同性愛が除外された出来事があった。

世界的に徐々に多様な性のあり方についての理解は深まりつつあるが、LGBTの人々への差別がなくなったわけではなく、現在もレインボーフラッグ(虹の旗)を掲げてLGBTの権利を訴える「プライド・パレード」が世界の多くの都市で開催されている。韓国ソウルでも2000年以来、毎年「ソウル・クィア文化祭」が開催され、そのハイライトとしてパレードが実施されてきた。昨年はコロナ禍の中パレードは実施されず、文化祭のみがオンライン形式で開催されたが、今年は6月27日に感染防止対策のため参加者を約50人に制限する中パレードが実施され、その模様がインターネットを通してライブ中継された。

パレードおよび文化祭に対しては、同性愛に反対する保守プロテスタント・グループによる妨害が毎年なされてきたが、今年はそれもなく平和裏にパレードが遂行された。韓国では2007年以来、性的指向に基づく差別もその対象に含んだ差別禁止法の立法化が試みられてきたが、いまだ制定には至っていない。この法案に反対する中心勢力の一つが保守プロテスタントでもある。

一方、韓国プロテスタントの中にはLGBTの人々の人権を擁護する人たちも多く存在する。そのうちの一人にイ・ドンファン牧師がいる。イ牧師は、2019年8月に韓国仁川市で開催されたクィア文化祭においてLGBTの人々に対する祝福祈祷を行ったことが問題視され、所属教団である基督教大韓監理会(KMC)の裁判にかけられた結果、昨年10月に停職2年の判決を受けた。イ牧師はそれを不服として上訴したが、本コラム執筆時において上訴審はまだ開かれていない状況にある。

KMC本部前に設置されたテント前に立つイ牧師=中央=と支持者たち(提供=NCCK人権センター)

そのような中、今年6月21日に超教派の団体である「性少数者祝福祈祷イ・ドンファン牧師処罰裁判の糾弾と性少数者差別法廃棄のための共同対策委員会」が発足し、記者会見を開いた。「性少数者差別法」とは、イ牧師に対する判決の根拠となった規定であり、KMCの一般裁判法3条8項のことを指す。同項には、「停職・免職・除名」に相当する罪として「麻薬法違反、賭博および同性愛に賛成したり、同調したりする行為」が挙げられている。イ牧師を含む共同対策委員会は、記者会見と同時にKMC本部前にテントを設置し、無期限の座り込みを開始している。また座り込み中のイ牧師は、上記パレードの最後に登場し、豪雨の中、大きなレインボーフラッグを振るパフォーマンスを行うことでLGBTの人々への連帯を示した。

記者会見の中でイ牧師は、次のように語った。「神さまはこの世のすべての存在を創造されました。神さまの創造には失敗はないのです。したがって神さまは性少数者も同じく、そのありのままを愛されておられるのです」

李 相勲
 い・さんふん 1972年京都生まれの在日コリアン3世。ニューヨーク・ユニオン神学校修士課程および延世大学博士課程修了、博士(神学)。在日大韓基督教会総会事務局幹事などを経て、現在、関西学院大学経済学部教員。専門は宣教学。

この記事もおすすめ