国軍が全権を掌握したミャンマーでのクーデターから4カ月を迎えた6月1日、作家、ジャーナリスト、学者、弁護士、宗教者など各界の識者らが「ミャンマーの人びとに寄りそう――いのちと平和と民主主義のために」と題する共同声明を緊急で発表した。
声明は、先進国の中で国軍と「特別のパイプ」をもつ日本の政府に対し、「自らの判断や行動がミャンマーの人びとの生命と人権、希望の行方に直結していることを自覚し、国軍の蛮行をやめさせ、ミャンマーが民主主義への道を再び回復できるような支援策をただちに講じてください」「選挙が自由かつ公正に実施されたことを国軍と国際社会に強く伝え、アウンサンスーチーさんたちの解放を求めてください」と要請。麻生太郎副総理が最高顧問を務める「日本ミャンマー協会」に対しても、「即座に暴力を停止し、民主化を崩壊させないように政府に働きかけてください」と呼びかけている。
賛同者には作家のいとうせいこう氏、落合恵子氏、澤地久枝氏、瀬戸内寂聴氏、ジャーナリストの津田大介氏、映画評論家の町山智浩氏、ミュージシャンの坂本龍一氏、宗教学者の阿満利麿氏(明治学院大学名誉教授)のほか、キリスト教界から飯塚拓也(NCC東アジアの和解と平和委員会)、ウェイン・バーント(カトリック司教)、大倉一美(ベタニア修道女会)、勝谷太治(司教・日本カトリック正義と平和協議会会長)、金性済(日本キリスト教協議会総幹事)、平良愛香(平和を実現するキリスト者ネット代表)、弘田しずえ(カトリック正義と平和協議会)、光延一郎(カトリック神父)、渡邊さゆり(マイノリティ宣教センター共同主事)の各氏ら計60人余が名を連ねた。
声明の全文は以下の通り。
緊急共同声明「ミャンマーの人びとに寄りそう――いのちと平和と民主主義のために」
2021年6月1日
私たちは、2月1日から続くミャンマーでの惨状に胸を締めつけられています。
国軍による突然のクーデタに対し、ミャンマー全土で無数の人びとが「自由を!民主主義を!」、「アウンサンスーチーさんたちの解放を」と立ち上がりました。しかし国軍は、これに銃弾で応えました。
クーデタから4か月を過ぎた今も、銃撃や空爆が毎日のように続き、市民の犠牲はますます増えています。そして国軍は、報道や通信をも徹底的に封殺しています。
そのなかで日本は、これまで世界最大のODA(政府開発援助)を供与し、軍とも「特別のパイプ」があると言いますが、日本政府の「制裁はせず、解決を促す」という態度を国軍は「事態を静観・黙認するというシグナル」とみているのではと危惧します。
私たち日本の市民は、それぞれの場所と方法でミャンマー市民への支援の声をあげ、手を差し伸べ、「私はあなたたちに心を寄せている」と示すことが、ミャンマーの人びとを励ますとともに、政府や企業を動かすことにもつながるでしょう。
そのうえで私たちは、特に政治的な責任ある立場のみなさんに次のことを呼びかけます。
1.欧米各国は、軍関係者とその企業などに制裁を発動しています。先進国で国軍との「特別のパイプ」を持っている国は日本だけです。だからこそ、菅内閣や外務省、財務省などの担当のみなさんは、自らの判断や行動がミャンマーの人びとの生命と人権、希望の行方に直結していることを自覚し、国軍の蛮行をやめさせ、ミャンマーが民主主義への道を再び回復できるような支援策をただちに講じてください。
2.ミャンマーとの関係を民間レベルで構築してきた日本ミャンマー協会は、即座に暴力を停止し、民主化を崩壊させないように政府に働きかけてください。協会の役員は、ミャンマーに進出している大手企業関係者や有力な国会議員で構成されているので大きな影響力があるはずです。最高顧問は麻生太郎・副総理、副会長に白浜一良・公明党顧問、理事に自民党の甘利明氏、加藤勝信氏、立憲民主党の安住淳氏、福山哲郎氏、公明党顧問の魚住裕一郎氏などです。
3.国軍は「不正選挙」をクーデタの理由にしていますが、日本は、笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表を団長とする選挙監視団を派遣し、二重投票を防止するための特殊インクも供与しました。外務省は、選挙は平穏に透明性をもって行われたと確認しているはずです。国連も結果を尊重するよう求めています。政府は、選挙が自由かつ公正に実施されたことを国軍と国際社会に強く伝え、アウンサンスーチーさんたちの解放を求めてください。
外務省報道発表:ミャンマー総選挙における選挙監視団の派遣
4.与党、野党の枠を超えて多くの国会議員が参加した「ミャンマーの民主化を支援する議員連盟」のみなさんの3月31日と5月26日の共同声明にある活動目標と要請は全面的に賛同できるものです。政府がこの要請に応え、早急に実行するようにさらに強く働きかけてください。
――最も大切な、生命と自由と民主主義への願いをこめて