「世界死刑廃止デー」でカトリック正平協「死刑廃止を求める部会」が上川法相に要請

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日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」(ホアン・マシア部会長)は、10月10日の「世界死刑廃止デー」にあたり死刑執行停止を求める声明を発表した。

声明は上川陽子法相に対し、在任期間中に死刑の執行を再び命じることがないよう要請した上で、「先週発表されたばかりの教皇フランシスコの最新の回勅『Fratelli Tutti』でも、全世界で死刑を廃止するためにカトリック教会を挙げて取り組む決意が明確に示されています」とし、「あなたに与えられた豊かな能力、そして法務大臣としての強い権限は、人を殺すためではなく人を生かすために、『すべてのいのちを守るため』に使ってください」と要望。

さらに「あなたがこれまでに発した死刑執行命令によっていのちを奪われた16名のために、私たちは祈ります。愛する人を失い、今なお悲嘆のうちにある方々のために、私たちは祈ります。あなたに命じられて直接の殺害行為に従事させられた多くの人々のためにも祈ります。そして何より、あなたのために、私たちはいつくしみ深い神に祈り続けます」と加えている。

全文は以下の通り。


10月10日の「世界死刑廃止デー」にあたり死刑執行停止を求めます

 私たち日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は、先月発足した菅義偉内閣において、第104代法務大臣に就任された上川陽子衆議院議員(静岡1区)に対し、大臣就任のお慶びを申し上げるとともに、本日 10 月 10 日の第18回「世界死刑廃止デー」にあたり、今回の法相在任期間中に死刑の執行を再び命じることがないように要請いたします。

 国際的な人権状況に大変詳しく、「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進に精力的に取り組まれているあなたに改めて申し上げるまでもありませんが、世界の多くの国々では人道的観点からすでに用いられなくなっている死刑を未だ毎年のように実施している日本に対し、国際社会からはたびたび強い非難が向けられています。また、現代のカトリック教会は福音の光のもとに、死刑は許容できない刑罰であるということをはっきりと教えています。2018年に改訂された『カトリック教会のカテキズム』でも(2267参照)、先週発表されたばかりの教皇フランシスコの最新の回勅『Fratelli Tutti』でも(263-270参照)、全世界で死刑を廃止するためにカトリック教会を挙げて取り組む決意が明確に示されています。私たちも全世界のカトリック教会と声を合わせ、そしてすべての善意ある人々とともに、日本政府に対して死刑廃止を求め続けてきました。

 にもかかわらず、9月17日の法務省初登庁後の記者会見において、死刑廃止について「現在のところ適切ではない」とあなたが答えたことを、私たちはとても憂慮しています。適切ではないどころか遅すぎるくらいですが、今からでもまだ間に合います。幸いにも2020年は現在のところ、1件の処刑も実施されていません。どうか今この瞬間から、死刑廃止に向けた勇気ある一歩を踏み出してください。まずは死刑の執行を停止し、死刑に関する現在の不透明な情報をすべて開示し、幅広い国民的議論を呼びかけてください。来年3月に延期開催される国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)開催国の法務大臣として、必ずやその決断が世界から称賛されることになるでしょう。

 政治家や法務大臣である以前に一人の人間として、あなたの良心の声に今一度、鏡を磨いて耳を傾けてください。あなたに与えられた豊かな能力、そして法務大臣としての強い権限は、人を殺すためではなく人を生かすために、「すべてのいのちを守るため」に使ってください。昨年11月に来日した教皇フランシスコが首相官邸にて語った「結局のところ、各国、各民族の文明というものは、その経済力によってではなく、困窮する人にどれだけ心を砕いているか、そして、いのちを生み、守る力があるかによって測られるものなのです」(11月25日)という言葉を、相次ぐ自然災害を前に、そしてこの未曽有のコロナ禍にあって、再び思い起こしてください。

 あなたがこれまでに発した死刑執行命令によっていのちを奪われた16名のために、私たちは祈ります。愛する人を失い、今なお悲嘆のうちにある方々のために、私たちは祈ります。あなたに命じられて直接の殺害行為に従事させられた多くの人々のためにも祈ります。そして何より、あなたのために、私たちはいつくしみ深い神に祈り続けます。あなたが法務大臣としての職務を全うすることができますように。

2020年10月10日

日本カトリック正義と平和協議会死刑廃止を求める部会
部会長 ホアン・マシア神父

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