米公民権運動の指導者ジョン・ルイス下院議員死去 2020年7月17日

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 1960年代にアフリカ系アメリカ人の人権確立のために闘った公民権運動の闘士、ジョン・ルイス下院議員が7月17日、膵臓(すいぞう)がんのために亡くなった。80歳。

 マーティン・ルーサー・キング牧師たちと共に、米公民権運動で指導的な役割を果たした。キング牧師が歴史的な「私には夢がある」演説をした、雇用と自由を求めた1963年の歴史的なワシントン大行進でも、取りまとめに尽力、「アメリカよ、目を覚ませ」と演説した。1986年に民主党から南部ジョージア州選出の連邦下院議員に初当選して以来、17期連続で州都アトランタを含む地域を代表した。

 2019年12月には、ステージ4の膵臓がんの診断を受けたと公表。「自分は生まれてこの方ほとんど常に、何かしら闘っていた。自由のため、平等のため、基本的人権のため。そして今、これほどのものは初めてだという闘いに直面している」とコメントしていた。公民権運動では、学生非暴力調整委員会(SNCC)の創設に関わり、1963年から66年まで委員長を務めた。

 同日、同じく公民権運動指導者だったC・T・ヴィヴィアン牧師も95歳で亡くなった。ヴィヴィアン牧師はルイス議員やキング牧師と親しく、人種隔離バスの運行に抗議する「フリーダム・ライド」運動の組織に関わり、後に南部キリスト教指導者会議(SCLC)の代表になった。ルイス議員の死去に伴い、ワシントン大行進で演説した公民権運動指導者は全員が故人となった。

 民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、ウェブサイトとソーシャルメディアで、ルイス議員の死去について声明を出し、ルイス議員を、「公民権運動の巨人で、その善良な人柄、信念と勇気がこの国を様変わりさせた」と称えた。さらに下院議員としては、「連邦議会の与野党を問わず、上下両院で敬愛されていた」としのんだ。

 ルイス下院議員の訃報を受けて、人権団体の全米黒人地位向上協会(NAACP)は「非常に悲しい」とツイート、「正義と平等と自由を求めた終生の取り組みは、この国と世界に消えない影響をもたらした」と、ルイス議員をたたえ、遺族に哀悼の意を示した。

 2011年、当時のバラク・オバマ大統領から米国最高位の勲章である大統領自由勲章を受けた。ドナルド・トランプ大統領には批判的で、17年1月の大統領就任式をボイコットしている。

 オバマ前大統領は声明で、ルイス議員とはオンラインのバーチャル・タウンホールで話をしたばかりだったと振り返った。黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に暴行され死亡した事件を機に開かれた集会で、ルイス議員は若い活動家たちの取り組みを称えていたという。

 ルイス氏は、1965年3月、アラバマ州セルマでの「血の日曜日事件」で、自身も警官に暴行されて大けがを負った。事件では、黒人が投票権の平等を求めてデモ行進中、警官隊の暴行を受けた。こうした功績を称え2011年には当時のオバマ大統領から文民としては最高位となる「自由勲章」を授与されている。

 ルイス氏は、ステージ4のすい臓がんであることを公表した後も精力的に議員活動を続け、白人警察官による黒人男性の死亡事件をきっかけに全米に抗議デモが広がるなかテレビのインタビューに応じ、改めて差別の撤廃を訴えていた。(CJC)

By United States House of Representatives – File:John Lewis-2006.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49741683

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