これからは水ばかりを飲まないで、胃のために、また、度々起こる病気のために、ぶどう酒を少し用いなさい。
テモテへの手紙一5章23節(参照箇所同書5:17〜23)
これは、初代教会の長老に対する心得を説いた言葉です。自分に都合よくここを読む人には、あたかも酒類解禁であるかのように思うかもしれません。この当時の教会には、極端な教えや自分勝手な振る舞いに走る者もいたようです(6章3節)。こうした者をキリストにある神の民の一員として教会に迎え入れるには、相当厳しい訓練が必要であったと思われます。そうなると、指導の方向も厳しさ一辺倒になりやすく、一方に片寄らずバランスの取れた関わりを持つように長老に勧めたのです。
「これからは水ばかりを飲まないで、胃のために、また、度々起こる病気のために、ぶどう酒を少し用いなさい」とは、初代教会では、教会の指導者は、信徒を指導する立場上、大酒を飲むことも含め、高潔な生活が要求されていたこともあり(3章1節以下)、極端な禁欲主義から水ばかり飲む者がいたと思われます。それに対して、極端に走らずバランスの取れた生活をするようにとの勧めであり、それによって信徒の指導にも一方的な偏りがなくなることを期待しているのです。
何事によらず、考えやライフスタイルのちがった人の集まりである教会では、バランスの取れた考えや関わりの姿勢は必要です。