米「主流派」教会 加速する牧師の親パレスチナ路線 信徒との間に温度差も?

緊迫する中東情勢への対応をめぐり、米国のキリスト教界でも激しい論争が続いている。米国のプロテスタントの中の保守層、いわゆる「福音派」にはイスラエル支持の立場を取る人が多いことが既によく知られている。それでは、福音派の対極に位置づけられるリベラル派のプロテスタント、いわゆる「メインライン(主流派)」の側の反応はどうか。『21世紀のキリスト教シオニズム』(2024年)=写真=の共著者で米国プロテスタントのイスラエル観に詳しいモッティ・インバリ氏(ノースカロライナ大学教授)とキリル・ブミン氏(メトロポリタン・カレッジ副学長)が、「レリジョン・ニュース・サービス(RNS)」に寄せた「オピニオン」(5月29日付)の中でこの問題を考察している。

両氏が指摘するのは、メインライン系の教会の内部の分断、とりわけ「牧師・指導層」と「一般信徒」の間の温度差である。一般に、メインライン教会はリベラルと言われ、人種平等、同性婚、環境運動などの推進に力を入れてきた歴史をもつ。イスラエル・パレスチナ問題に関しても、特に2000年代以降、メインライン系の牧師・指導層はパレスチナ寄りの姿勢を強め、イスラエルに対する「ボイコット、投資撤収、制裁」(Boycott, Divestment, and Sanctions=BDS)運動への支持を表明する教会も増加した。こうしたメインライン系の教派には、キリスト連合教会、USA長老派、合同メソジスト教会などが含まれる。

両氏によると、こうしたメインライン教会の牧師・指導層の急進的な親パレスチナ路線に、一般信徒たちは必ずしもついてきておらず、むしろ両者の間にギャップが見られるという。両氏の調査によればメインライン系の教会に通う信徒のうちBDS運動を支持するのはわずか7%にすぎない。一般信徒のこうした立場は、2023年10月7日に始まったハマスとイスラエルの衝突以降も大きく変化していない。メインラインの一般信徒のうち47%が同戦争以降も変わらずにイスラエルを支持すると回答し、また22%はむしろイスラエル支持の立場をいっそう強めたと回答している。

この調査結果を踏まえてインバリ、ブミン両氏は、メインライン教会内部の一般信徒=「サイレント・マジョリティ」は親イスラエルの立場であり、親パレスチナ的な路線を進める教会の指導層との間に乖離があると指摘。牧師ら指導層が今後イスラエル批判を強めれば強めるほど、このずれは広がっていくだろうと両氏は推測している。

(翻訳協力=木村智)

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