日本学術会議への抗議声明 映画監督の森達也さん、ニーメラーの詩に込めた思い

「日本学術会議」が推薦した新会員候補者105人のうち6人を菅義偉(すが・よしひで)首相が任命しなかったことを受けて、是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督ら映画人22人が5日、「日本学術会議への人事介入に対する抗議声明」を発表した。そのとりまとめの中心となった映画監督の森達也(もり・たつや)さんは、ドイツの牧師マルティン・ニーメラーによる次の言葉を声明文に盛り込むよう提案したという。

森達也監督(写真:Vera de Kok)

ナチスが共産主義者を攻撃し始めたとき、私は声をあげなかった。なぜなら私は共産主義者ではなかったから。
次に社会民主主義者が投獄されたとき、私はやはり抗議しなかった。なぜなら私は社会民主主義者ではなかったから。
労働組合員たちが攻撃されたときも、私は沈黙していた。だって労働組合員ではなかったから。
そして彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる人は一人もいなかった。

ニーメラーは、ナチ政府に抵抗したドイツ告白教会の牧師・指導者。最初はナチの支持者だったが、1933年、「病人や障がい者は安楽死させよ」というナチの命令に抵抗していたドイツ福音主義教会全国監督がナチ政府の圧力によって辞めさせられたことを契機に、ドイツ教会闘争の指導的人物になった。翌年、ヒトラーとの会見の際、「宣教の自由と純粋さこそが大切」と伝えようと試みたが、徒労に終わる。37年、ゲシュタポにより逮捕され、強制収容所に敗戦になるまで収容された。戦後はドイツ再軍備に反対し、平和運動の指導に当たった。

森さんは、オウム真理教を扱った自主制作ドキュメンタリー映画『A』や続編『A2』で高い評価を受けた。著書に、仏教、キリスト教、イスラム教の三大宗教を軸に「信仰とは何か」というテーマに迫った『神さまってなに?──14歳の世渡り術』(河出書房新社)などがある。昨年の2月11日には、名古屋キリスト者集会で講演し、「キリスト教は何度も過ちを繰り返してきたが、イエス・キリストの言葉をしっかりと意識化していれば、キリスト教の歴史は変わっていた」と語った。また、森さんは著書『誰が誰に何を言ってるの?』(大和書房)の最後でも、このニーメラーの詩を引用している。

声明文では次のように指摘している。

ここの問題は、学問の自由への侵害のみに止まりません。これは、表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦です。……今回の任命除外を放置するならば、政権による表現や言論への介入はさらに露骨になることは明らかです。もちろん映画も例外ではない。

日本学術会議事務局(写真:Rs1421)

一方、日本学術会議そのものの問題点を指摘する声もある。経済学者で内閣参事官も務めた髙橋洋一(たかはし・よういち)さんはこう語る。

かつて会員は研究論文をもつ全ての研究者による公選制だったが、今では年長研究者が推薦される縁故的なものになっている。

日本学術会議は一部の貴族のようなもので、研究の最盛期を過ぎた引退間際の豪華なポストでお小遣い付きにみえた。

日本学術会議は、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には積極的に協力している……。そのために、日本学術会議は、中国共産党軍と関係の深い中国科学技術協会と協力覚書を結んでいる。

(日本学術会議による)2011年4月「東日本大震災への第三次緊急提言」では、復興財源として日銀引受を否定し、復興増税を勧めた。実際に、この提言は民主党政権で実行され、災害時に増税という経済理論にも反し古今東西見られない悪政が行われ、多くの人が今でも苦しんでいる。この意味で、日本学術会議の提言の責任は大きい。(「問題だらけの『日本学術会議』は、今すぐ『民営化』するのが正解だ」現代ビジネス)

もし、このような問題があるのであれば、国民に納得できるように菅首相は説明することが期待される。

 






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