神さまが共におられる神秘(18)稲川圭三

誰が正しいかより、誰に対しても仕える

2015年9月20日 年間第25主日
(典礼歴B年に合わせ3年前の説教の再録)
すべての人に仕える者になりなさい。
マルコ9:30~37

説 教

イエスさまは弟子たちに、「途中で何を議論していたのか」とお尋ねになりました(9:33)。すると弟子たちは黙っています。「途中でだれがいちばん偉いかと議論し合っていたからである」(34節)。

今、「途中で」という言葉が2回続けて出てきました。「途中で」と訳されているギリシア語は、直訳すると「道で」という表現です。

イエスさまの「道」に従う中で、「だれがいちばん偉いかと議論し合っていた」ことはイエスさまがお喜びにならないと弟子たちは何となく分かっていたから黙っていたのです。

そこでイエスさまは12人を呼び寄せて、「いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい」と言われました(35節)。

私たちもイエスさまに従う「道」を歩いています。その道の中で「だれがいちばん偉いのか」と議論し合うようなところがあるかもしれません。

ここで「偉い」と訳されているギリシア語は「メガ」という言葉です。「メガ・バンク」とか「メガ・マック」とか、「大きい」という意味で使われます。つまり弟子たちは、イエスに従う道の途中で「だれがいちばん大きいか」「だれがいちばんビックか」を議論していたことになります。

大きさについての理解が、イエスさまと弟子たちではまったく違っていました。弟子たちや私たちは、たくさんの人に「仕えてもらっている人」が偉いと思うのではないでしょうか。たとえば、大勢の人に取り囲まれ、仕えられている人を見たら、「あの人って何か特別の人なの?」「何かすごく偉い人?」と考えるのです。

私たちの考える大きさは、どれだけ大勢の人に「仕えられているか」という大きさです。テレビのドラマで主演の俳優が40%の視聴率を出したら、「すごい人だね」ということになります。どれだけ多くの人に仕えてもらい、偉いと認めてもらうかが、普通の人間の考える「大きさ」です。

でも、イエスさまのおっしゃる「大きさ」は違います。どれだけ多くの人に「仕えるか」。それがイエスさまの言う「大きさ」です。「そのことを勘違いしてはいけない」と教えるために、イエスさまは12人を呼び寄せて、「いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい」と言われたのです。

イエスさまは弟子に教え、そして実際そのように生きたお方です。神さまとは「仕える方」です。なぜなら、すべての人の中にご自分のいのちを吹き入れて、共に生きられるお方だからです。

だから「仕える」とは、人間の中に神さまのいのちがあることを認めて、祈ることだと私は思います。「仕える者」である神さまを認めることです。

私たちは「だれがいちばん偉いか」より「だれがいちばん正しいのか」という議論や考えになることがあるのではないでしょうか。でも、本当の真実というのは、人間がどれだけ正しいかではなく、すべての人間の中に「神さまが共にいてくださる」という神の真実こそ「大きさ」であり「正しさ」だと思います。私たちに必要なのは、まずそのことを認めることではないでしょうか。

ただ一つの、私たちがいちばんに持つべきまなざしは、その人がどれだけ正しいか、大きいか、清いか、立派かではなく、神の真実に向けられるべきです。つまり、人間の正しさ、清さ、立派さをはるかに超えて、あなたの中に永遠のいのちの神さまが共におられるという神の真実です。これだけが、私たちが目を向けるべき第一番目の真実です。

イエスさまは「仕えられる」ためではなく、「仕える」ために来られました。そのことを「十字架」の出来事がよく教えてくれます。イエスさまは十字架のもとにいる人々から侮辱されましたが、祈られたのです。「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」(ルカ23:34)。「彼らは、自分が神の子だということを知らないのです」と祈られたのだと思います。

イエスさまは、人から「神の子」だと言ってもらうために来られた方ではありません。人に「神の子」だと言うために来た方です。だから、私たちはそのお方の「道」に従うのです。

人に馬鹿と言われたり、無視されたり、人間扱いされなくたっていいのです。私がその人に「神さまがあなたと共におられます」と祈ればいいのです。それがイエスに従う「道」です。

人に何を言われてもかまいません。その人に「神さまがあなたと共におられます」と祈る。これが「仕えられる」ためではなく「仕える」ために来たイエスさまの「道」です。

お互いの中に神のいのちを見いだし合うことが、イエスの「道」に従う者の歩みです。そのように今日もまた新しい心で歩ませていただけるように、ご一緒にお祈りをしたいと思います。

 






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