日本実践神学会 現場の必要に応える神学を 関田、坂野、加藤の3氏そろい踏み

三者三様の牧会スタイルを提示
〝教会は聖書的共同体をどう形成するか〟

日本実践神学会(日本実践神学会運営委員会主催)の第2回が10月8日、関西学院大学東京丸の内キャンパス(東京都千代田区)で対面とオンラインのハイブリッドにより開催された。今年3月、「実践神学の現状と課題――今、日本の教会の中で」と題して行われた第1回に続くもので、対面では初めての開催となった。

日本実践神学会は、これまで説教学、礼拝学、牧会学を包括する実践神学の分野が、教会の現場で必要とされ、学びたいという関心も高まる一方、研究方法が確立されておらず、限られた研究成果も教会と十分に結びついていないという現状を憂慮し、雑誌「Ministry」の編集委員などを通じて交流のあった牧師らが声をかけて立ち上げた。運営委員には教派や大学の垣根を超えて、荒瀬牧彦、岡村直樹、小泉健、越川弘英、才藤千津子、中道基夫、朴賢淑、平野克己、事務局として橋本祐樹、村瀬義史の各氏が名を連ねている。

「日本の実践神学の研究・研究発表の場となること」「実践神学の方法論の確立」「次世代の実践神学を志す研究者の養成」「各神学部・神学校の実践神学の交流」「実践神学の研究対象となる資料・データの編集」などを目的として掲げ、今後は定期的に研究会を開催しながら学術論文雑誌の発行などを目指す。

 第2回となる今回のテーマは、「日本実践神学会への期待と展望」。これまで日本の実践神学を牽引してきた加藤常昭、関田寛雄、坂野慧吉の3氏を講師に招き、日本の実践神学の歩みを振り返るとともに、現代直面している課題、また今後の展望について分かち合った。ライブ配信も行われ、会場とオンライン合わせて約80人が参加した。開会礼拝で渡邊さゆり氏(マイノリティ宣教センター共同主事)がメッセージを語った後、3人の講師がそれぞれ登壇した。

最初に登壇した加藤氏は1929年生まれ。86年まで東京神学大学で実践神学を担当。日本基督教団若草教会、牛込払方町教会、鎌倉雪ノ下教会の牧師を経て、97年から日本基督教団隠退教師。93歳になる現在も説教塾の主宰として、後進の説教者養成に尽力している。日本の実践神学のパイオニア的存在で、特に説教学の分野における加藤氏の功績は計り知れない。また、信徒共同体形成のための『雪の下教会カテキズム』(教文館)は大きな注目を集め、ドイツ語にも翻訳されている。

加藤氏は、実践神学を「神学の冠」と表現。「実践神学は、神学教育の最後を飾るのも確かであるが、神学教育の先頭にあるものだ」と述べ、現場と結びついた神学というものの重要性を語った。1965年にドイツ福音合同教会の奨学生としてドイツに招かれて以来、ドイツやアメリカで実践神学を学び、日本に持ち帰ってきた加藤氏だが、今の日本には、世界が学びたくなるような実践神学というのがあるのではないかと話す。それは、新たに作るというよりも、教会が行っている中で見出すことができる。それを自身が牧会した雪の下教会の活動の中から語り、交わりと慰めとが語られる聖書的(信徒的)共同体である「ゲマインデ」としての教会の形成の意味を説いた。

続いて登壇した関田氏は1928年生まれ。日本基督教団桜本教会、川崎戸手教会牧師を経て、現在、日本基督教団神奈川教区巡回教師。『「断片」の神学』(日本キリスト教団出版局)など多数の著書を持ち、昨年刊行した『目はかすまず気力は失せず』(新教出版社)は、キリスト教出版販売協会が主催する「キリスト教書店大賞2022」にもノミネートされた。同書に収録された「説教学的循環を生きる」は、神学校の教材にも使われている。

関田氏は、青山学院大学大学院、マコーミック神学校、アンドヴァー・ニュートン神学校卒業後、派遣された川崎で労働者や在日コリアンの人々とともに過ごしたことを振り返り、神学の実践は、遣わされる現場の状況に大きく規制されることを語った。地域から浮き上がっている教会で宣教はできないとし、地域に根付く教会となるならば、現場との関わりの中に生きることが重要であり、神学は現場から始まることを強調した。その上で、新しいメディアや、新しい音楽を用いた礼拝や説教、牧会のあり方について言及。さらに、その方法論や、アイディアに目を向けるだけでなく、その根本に生きた受肉の言葉は語られているか、ゲマインデとしての教会の形成にどうつなげていけるかを探った。

最後に登壇した坂野氏は1941年生まれ。大学生時代にクリスチャンとなり、大学卒業後、聖書神学舎(現・聖書宣教会)に入学、卒業。キリスト者学生会(KGK)の主事を経て、71年から浦和福音自由教会牧師。東京基督神学校と聖書宣教会では牧会学を教えていた。「牧会ジャーナル」編集委員長、社会福祉法人「キングスガーデン埼玉」理事も歴任している。

坂野氏は、20世紀の心理学、カウセリングが教会の働きの中に導入されて以来、牧師のさまざまな働きの中で「説教」と「牧会」が区別されてしまったことの弊害について指摘。「牧会的な奉仕がなければ、牧会的な説教は生まれない」と考えていることを明かしつつ、牧会の基本的な機能は「癒やし」「支え」「導き」「和解」であるとし、旧約聖書「ルツ記」から魂の配慮について説いた。この物語には牧会の四つの基本機能が見られ、それらが有機的に紡ぎあわされて、「コミュニティ」が形成されたという。そこから救い主イエス・キリストの系図へとつながっていくと結んだ。

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