ハンガーゼロ「人財育成セミナー」 全人的成長を目指し全5回 開拓伝道の〝失敗〟活かす ファシリテーター・田村治郎さんインタビュー

飢餓や貧困に苦しむ世界の国々を支援してきたハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機構、清家弘久理事長)が、コロナ禍を経て定期的に開催する「人財育成セミナー」の参加者を募集している。「全人的成長」を目指し、途上国で実践してきた開発教育のノウハウを教会の宣教に応用する試みとして期待が寄せられている。

ファシリテーターを務めるのは、啓発事業部巡回スタッフとして活動地の報告や学校などでの講演会を通し、支援者と被支援者の橋渡しに従事してきた田村治郎さん。およそ20年前、日本福音自由教会協議会に属する教会の牧師として、開拓伝道に従事した経験をもつ。ハンガーゼロで全国の教会を巡回するようになって以来、多くの教会が共通の悩みを抱えることを痛感してきた。実際、変わる必要を感じながらどうしていいか分からないとの声にも多々接してきた。当時から今日に至るまで、状況はそれほど変わっていないという。

「私の役割は何かと考えた時に、各地の教会を見聞きしてきた経験を活かして、励ましやヒントを提示することができると考えました」

必要を感じながら具現化には踏み出せずにいたが、コロナ禍によるオンラインの普及が大きな後押しになった。2020年7月の初回から数えて、今回で6回目を迎える。セミナーはすべてオンラインで開催され、福音派に限らず聖公会、カトリックなど教派を超えて全国各地から、海外や教会単位での参加も含め、これまでの受講者は延べ150~200人に上る。聖書の訳語などの違いはありつつ、内容については違和感なく受け止められている。

田村さんはセミナーの特徴について、「教会が伝えたいことを一方的に伝えるだけではなく、地域のニーズに応えることが大事。教会同士の『傷のなめ合い』だけにはならないように」と語る。巡回先でさまざまな教会学校(CS)の活動を見聞きする中、子どもたちやユースの減少、または教会学校そのものを休止している実態に、信仰継承における危機感を募らせてきた。さらに、自身の牧会上の〝失敗〟から得た教訓が根底にある。

「牧師をしていた当時、毎日毎日トラクトをポスティングしていたのですが、ある時、最寄りの駅に降り立つ人に尋ねたところ誰も教会の存在を知らなかったことに衝撃を受けました。同じ建物の1階にあるパン屋さんは誰もが知っているのに、2階にあった教会は知らない。その現実に打ちのめされながら、そのギャップをどう埋めるかと考えた時に、教会は地域社会の需要に応えられていない、『ひとりよがり』だったのではないかと」

地域の呻きに耳を傾けてみると、子育てで悩む親世代が多いことに気づかされた。遣わされた地域に仕えるために、それぞれの教会が、そうした視点で地域を見直してみる必要性を訴える。

セミナーが軸とする「全人(包括的)宣教」は、ハンガーゼロが専門的に携わる海外での自立支援活動でもベースとしてきた考え方。人間の存在を「霊的」「肉体的」「精神的」「社会的」側面からとらえ、福音宣教はその全領域の必要を包括するものと理解する。

ケニア・ナイロビのスラム街で10代の女児が売春させられる過酷な実態。人口の8割がキリスト教徒のルワンダで、教会が虐殺の舞台になったという現実。途上国の困難な課題に触れながら、それでも人生を肯定する「生きる力」としてみ言葉を提示してきた宣教師や教会の働きが、「全人宣教」の原点となっている。求められているのは建物や組織としての教会ではなく、「人づくり」。

聖書を知識としてしか教えてこなかった自身の開拓伝道の経験では、どんなに教会学校が充実しても、節目で子どもたちが「卒業」していく。み言葉は、「大人になったら不要なもの」に留まっている。かつて数を増やすことを志向し、信仰決心者・受洗者数に一喜一憂していたことを振り返り、「この世の基準にとらわれていた愚かさに気づいた」と話す田村さん。「これまでの宣教は『間違い』ではありませんでしたが、『適切』ではなかった。み心に適うキリスト者が少数でもいれば、社会や国は変わるはずです」

繰り返し強調した聖句は「誰も、新しいぶどう酒を古い革袋に入れたりはしない」(ルカによる福音書5章37節)。「私たちの真の目的は、団体の規模を拡大することではありません。これらの働きを教会が自らのミニストリーとして担うことができた時、私たちの役割は終わります。それまでは、教会から伸ばされた宣教の手足として働き続けたいと思います」

「人財育成セミナー」は8月8日(月)、22日(月)、29日(月)、9月5日(月)、12日(月)の全5回。午後1時半からの「昼の部」、7時半からの「夜の部」で、それぞれ定員10名の受講者を募集中。締め切りは8月5日(金)。申し込み・お問い合わせは専用フォーム(https://bit.ly/3RVu7rA)、またはハンガーゼロ・田村(Tel 090-6432-0437、jtamura@jifh.org)まで。

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