瀧口俊子、大村哲夫、和田 信 編著 共に生きるスピリチュアルケア(柏木哲夫)【キリスト教書書評・本のひろば.com】

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評者: 柏木哲夫

共に生きるスピリチュアルケア
医療・看護から宗教まで

瀧口俊子、大村哲夫、和田 信 編著
A5判・400頁・定価3520円・創元社
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スピリチュアルケアを理解するために
〈評者〉柏木哲夫

本書はスピリチュアルケアについて知りたいと願っている方々にとっては、待望の書だと思います。医学には解剖学や病理学のような基礎医学と、外科や内科といった臨床医学があり、同じようにスピリチュアルケアにも基礎と臨床があります。本書の特徴の一つはスピリチュアルケアの基礎と臨床がバランス良く記述されている事だと思います。私は本書の「はじめに」を書かせていただきました。スピリチュアルケア学会の会員の執筆が多く、私が学会の理事長を仰せつかっている関係で依頼を受けたものと理解いたしました。
書名に医療・看護、宗教という言葉が入っていますが、この三つの領域だけがスピリチュアルケアが重要視されるというわけではありません。教育や企業の現場でもスピリチュアルケアが必要になる場合があります。しかし、この三つの分野は特にスピリチュアルケアと親和性が高いのではないでしょうか。私はホスピスという場で約二五〇〇名の患者さんの看取りを経験いたしました。ほとんど全員がスピリチュアルペインを持っておられました。
ある時、スピリチュアルケア学会の立看板を見て、通りすがりの二人組の中年の婦人の一人が、「スピリチュアルケア学会ってどんな学会?」と連れに尋ねました。その連れは「よく知らないけれど、魂のケアについて研究している学会かな」と答えました。この人は「スピリチュアルケア」を「魂のケア」と言いました。見事だと思いました。
新しい概念を新しい言葉で表現し、それを一般社会に広めていくには特別の努力が必要です。一九八四年に淀川キリスト教病院でホスピス病棟をスタートさせた頃、「ホスピス」というものを多くの人に知ってもらいたいと思いました。そんな時、ある雑誌に興味深い記事が載りました。新しい言葉が市民権を得ているかどうかは、タクシーの運転手がその言葉を知っているかどうかで決まる……というのです。タクシーの運転手は乗客との会話、乗客同士の会話から、今、世間で話題になっていることを知ります。この記事を読んで、私はタクシーに乗る度に、「運転手さん、ホスピスって知っていますか?」と尋ねる癖がつきました。「新手のホステスですか」というようなガックリくるような答えをもらうこともありました。最近でも時々尋ねますが、嬉しいことに、ほとんどの運転手さんが、詳しい内容はともかくとして「ホスピス」という言葉を知るようになりました。
「スピリチュアルケア」という言葉はどうでしょうか。タクシー運転手に尋ねたことはありません。まだまだ市民権を得ているとは言えないかもしれません。しかし、新聞やテレビ、その他のマスコミで取り上げられることが次第に多くなってきている感じはあります。スピリチュアルケアに関心を持っておられる方々の一読をお勧めいたします。

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